松木 悠佳

麻酔の科学

  • 松木 悠佳
  • MATSUKI Yuka
  • 医学部 教授 (麻酔?蘇生学)

Profile

福井県出身。2005年、東京女子医科大学医学部卒業。2007年、福井大学医学部附属病院後期臨床研修医、麻酔科蘇生科入局。
2009年、同大医学部分子生理学特命教員。2010年、同麻酔?蘇生学助教、2022年、同講師を経て、2025年より現職。
研究者詳細ページ

実は未解明 麻酔が効く仕組み

 麻酔薬が開発されて200年にもなりますが、未だ麻酔の分子メカニズムは解明されていません。麻酔科医として、基礎から臨床までの研究を紹介します。
 近年、麻酔薬の作用標的の一つがイオンチャネルであることが示唆されていますが、単純にイオンチャネルに結合するのではなく、細胞膜中に存在するイオンチャネルが膜と相互作用する中で麻酔薬が複雑に作用します。私は、イオンチャネルがどのような性質を持ったタンパク質なのか関心を抱き、まずイオンチャネルの研究を始めました。私達の研究室の実験系は、目的のイオンチャネルと目的の脂質(膜)を使います。さらに膜の張力や厚さを自由自在に制御することもできます。この方法を使って、麻酔のターゲットと考えられるイオンチャネルを膜に組み込み、チャネルが張力に応答して開閉することを発見しました。麻酔薬が細胞膜の張力に及ぼす影響に着目し、細胞膜の張力変化によるイオンチャネルの効果を調べ、麻酔の作用機序を解明し、より効果的な麻酔薬の開発につながればと思っています。

 

ロボット麻酔システムの概要図

ロボット麻酔システム

 臨床分野で関わった研究は、ロボット麻酔システムの開発です。全身麻酔による手術中は、執刀医とは別に麻酔科医も付きっきりで麻酔管理に当たります。さまざまな診療科の手術に対応するため負担は大きくなりがちで、麻酔科医不足にもつながっています。
 私たちの研究チームが開発したのは、患者の状態が安定に推移している状況下で、脳波や筋弛緩のレベルや脈拍などに応じて麻酔薬を投与するなど、麻酔管理の中でも繰り返しや計算を要する部分をコンピューター制御に任せることができるシステムです。麻酔医は負担が軽減されることにより、患者の全身状態の看視に注力できるといった安全性の向上も期待されます。他大学、病院、民間企業との共同研究で、2023年7月に製品化を実現しました。現在、本学医学部附属病院をはじめ、全国10の医療機関で導入?運用が進められています。

It's My Favorite!

野球好きの子どもに付き合い野球場に行っています。炎天下の客席で飲むビールが最高!